「ダウン・バイ・ロー」
一緒に映画を見に行った友人から教えてもらった一本。
何だか知らないけど、何日か経つとまた見たくなってくる。中毒性があるよ、この映画は。
《あらすじ》
チンピラでポン引きのジャック(ジョン・ルーリー)は縄張り争いをしていたギグにはめられて投獄。元DJで無職、妻に家を追い出されたザック(トム・ウェイツ)は死体運びとは知らず、車を運転するだけで1000ドルという怪しい仕事を引き受けてしまい投獄。おかしなイタリア人のボブ(ロベルト・ベニーニ)はカードでいかさまをしたことによる争いで、人を殺してしまい投獄。同じ獄房で過ごす3人は脱獄して・・・。
また油断させられてしまいました。
完全に油断させたところに現れる起爆剤のベニーニ。私としては、これだけで大満足だったりする。やけにでかいベニーニの声と「やっぱりおかしなイタリア人なのね」と期待を裏切らない役柄。そして、凄いなと思うのは、何故かこの変なイタリア人が出てくることでストーリーがキュッと引き締まるんだよね。
それは、映画全体の話だけではなくて、物語に登場する人間関係においても同じ。ボブが投獄されてくる前、ジャックとザックの二人だけの獄房はどこかギクシャクしている(それもそれで面白いんだけど)。でも、変なイタリア人が登場することで、獄房の雰囲気が変わるんだ。
ボブは英語がよく分からないイタリア人で、わけの分からぬことをずっとしゃべりまくってる。最初はジャックもザックもボブを「変なやつ」っていう目で見てるんだけど、そのうちボブにつられて3人で大騒ぎしたり、仲良くカードしたりするようになる。
この“英語がよく分からない”ってのが一つのポイントだと思うの。持ち前の陽気さもあるんだけど、片言の英語でしつこいくらいに二人に話しかけるボブ。見た目は完全なるおじさんなんだけど、ずっと見てると天真爛漫な少年のように思えてくる。何をされても、「しょうがないな~、だってボブだもん」の一言で許さざるを得ないような愛嬌のあるキャラクター。ジャックとザックはボブのことを“宇宙人だ”って言ってたけど、その通りだよ(少なくともジャックとザックにとっては)。彼は人の心を柔らかくする不思議な力を持っている。
映画を見てる私にとってもボブは起爆剤だったけど、ジャックとザックの二人にとってもボブとの出会いは衝撃的だったのではないだろうか。二人の心にはボブの種が植えられてしまった気がする。きっとろくな花は咲かせないんだろうけど・・・。『真っ黒だったカーペットに一箇所だけドドメ色の染みが出来ました』みたいな感覚がすごく好き。ほとんど意味無いんだけど、ちょっとだけ意味があるような感覚。去っていった二人の後ろ姿を見てて、そう思いました。
今まで見たジム・ジャームッシュの作品の中では、今のところ一番好きです。これを最初に見ておきたかった。
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コメント
nocciさん、こんばんは♪
ジム・ジャームッシュの作品はこれで4作目になります。見る度にこの監督の映画がどんどん好きになってきて・・・ハマりつつあります。nocciさんのお言葉を借りると「ずれた感じ」っていうのが、癖になるんですよね。
そういえば、シャンテシネで7月か8月くらいに、いろんな監督の古い作品を公開するイベントがあるみたいですね。その時にジム・ジャームッシュの作品も上映されるみたいですよ。
投稿: ムム | 2006年6月 7日 (水) 23時24分
お久しぶりです。
この映画に限らず、ジャームッシュの映画って、あの独特の間合いがおもしろいですね。なんか、ずれた感じというか・・・
出演者もみな個性的なんですが、(アカデミー賞受賞前の)ロベルト・ベニーニが出てたんですね。すっかり忘れてました。ジャームッシュの古い作品まとめて見直そうかなあ。
投稿: nocci | 2006年6月 7日 (水) 23時05分